PRO-VISION2 L8 テディーベア物語 (2)


Part3

1902年、マルガレーテが55歳のとき、
彼女の人生に大きな転機が訪れました。
彼女は甥がスケッチした型紙をもとにした
クマのぬいぐるみを作りました。
それまでこのようなおもちゃはありませんでした。
腕、脚、首に継ぎ目があって、動きました。
目には輝くボタンが使われました。
体は柔らかい毛並みの質感を生み出すために
モヘアでできていました。
はじめは、マルガレーテは
クマのぬいぐるみの生産を推し進めるべきかどうか
自信がありませんでした。
作るのが難しく、材料が高額だったためです。
しかし、最終的に、
子どもたちには最良のものこそがふさわしいという
彼女自身の信念にもとづき、
生産することに決めました。
国際見本市で、そのクマのぬいぐるみが
アメリカのおもちゃ会社のバイヤーの目を引き、
そのバイヤーは3,000 体を注文しました。
その結果、マルガレーテのクマは
海を渡ってアメリカに行きました。
それはアメリカで人気となり、
そこでテディベアと呼ばれました。
テディベアはすぐに
マルガレーテの会社の売れ筋の商品となりました。
デザインにいくつかの変更が施され、
今日私たちが知っている、
思わず抱きしめたくなるかわいらしい体型で、
無邪気な子どものような目をしたおもちゃとなりました。
マルガレーテは1909年に61歳で亡くなりましたが、
彼女の理想は世代から世代へと受け継がれています。
品質の基準は変わっていません。
今なお、テディベアは1つずつ、
熟練した職人たちによって丁寧に手作りされています。
 
Part4

多くの人びとにとって、
テディベアは大切な友達や家族のようなものです。
欧米では、子どもたちは
幼いときから自分の部屋で寝るのが一般的です。
親は、子どもが寂しくならないように
ぬいぐるみを贈ります。
子どもに最初に贈られるぬいぐるみは、
たいていの場合テディベアですが、
子どもの最初の友達とみなされます。
テディベアは感情を落ち着かせてくれます。
アメリカでは、事故に遭った子どもを慰める
テディベアをパトカーに乗せています。
ドイツでは、子どもたちのために
テディベアが乗っている救急車があります。
テディベアは、子どもの最初の友達であり
いつも一緒の仲間なので、
恐怖や不安をうまくなだめてくれます。
20世紀半ばに
Good Bears of the World という団体が
スイスで設立されました。
その使命は、心の支えを必要としている人びとに
テディベアを贈ることです。
この団体は世界中から寄付を募り、
それを使って自然災害や事故、病気で苦しんでいる子どもたちに
テディベアを贈ります。 
この運動は今や、日本を含む世界中に広がっています。
もしテディベアがなかったら、世
界の子どもたちはもっと寂しく思ったことでしょう。
うれしいときも悲しいときも、
テディベアは子どもにとって最も身近な仲間です。
マルガレーテのテディベアは
これからの世代の人びとを癒やし続けていくことでしょう。
マルガレーテの信じたように、
子どもたちには最良のものこそがふさわしいのですから。